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カントリー・ミュージック(
英語:
Country Music)とは、
アメリカ合衆国南部で発祥した
音楽である。アパラチアン・ミュージック、マウンテン・ミュージック、ヒルビリー、カントリー&ウエスタンなどと呼ばれた時期を経て、現在の名称となった。
ヨーロッパの伝統的な民謡や
ケルト音楽などが、
スピリチュアルや
ゴスペルなど
霊歌・
賛美歌の影響を受けて
1930年代に成立した。
ブルーグラス、ジャグバンドなどの分野とは、相互に影響を与え合って発展してきた。主流の保守的なカントリーに対して、オルタナ・カントリー、アウトロー・カントリーなどのジャンルもある。また近年、アメリカーナという新しいジャンルも音楽界に創設された。
概要 [編集]
演奏に使われる楽器 [編集]
演奏には当初、
ギター、
マンドリン、
フィドル(
ヴァイオリン)、
バンジョー、
リゾネーター・ギター、
ペダル・スティール・ギター、
ウッドベース、
オートハープ、
アコーディオン、
ハーモニカなどが用いられ、時には
ジャグ・バンド同様に金属製の
バケツや
たらい、
洗濯板や
のこぎりなど生活用品や工具や農機具なども使われた。
現在のカントリーバンドの構成は、いわゆる“普通のロックバンド”と同じ、
ギター、
ベース、
ドラム、
キーボード等が中心で、そこに
フィドルや
バンジョー、
スティール・ギターなどを加えて、俗に言う“カントリーらしい味付け”をする場合も多いが、必ずしもそれらの楽器が必要というわけではない。
イメージ [編集]
西部開拓時代や
カウボーイを連想する人も多いが、それはあくまでも
ハリウッドの映画産業や
ブロードウェイ・ミュージカルなどが作り上げた
西部劇の影響であり、元々はそれほど深い関係にはない。そもそもカウボーイ全盛の19世紀にはまだ「カントリー」という概念は存在せず、20世紀に入ってからの西部劇で演奏された曲も、
クラシック音楽の作曲家が民謡などをベースに作った
映画音楽・
舞台音楽の類で、厳密に言うとカントリーというジャンルにも当てはまらない場合が多い。 後に一部のカントリー・ミュージシャンがそのイメージと人気にあやかり、
カウボーイハットやブーツを身に着け、西部劇風の演出を取り入れる様になる。 しかし現代のカントリー・ミュージシャンは西部劇で描かれるような世界観ではなく、むしろ現在のカウボーイのイメージを確立し、
ピックアップトラックや
ATV、
釣り具や
銃器・
狩猟具関連の
テレビCMなどで頻繁に彼らの曲が使われる。
人種 [編集]
現在カントリー・ミュージックはアメリカを中心に、
カナダ、
オーストラリア、一部
ヨーロッパでも人気だが、やはりファンやアーティストには白人系が圧倒的に多く、そもそもがアメリカ南部やアパラチア発祥の音楽のため、一部では「
人種差別と関係が深い音楽」と誤解されがちである。 実際、戦前や少し古い時代の曲の中には人種差別的な歌詞が入ったものや、たとえ現在であっても
アンダーグラウンドなシーンでは、
差別用語・
放送禁止用語を連発する過激な歌手も一部に存在する。 しかしながら、それはどのジャンルの音楽にも当てはまることで、カントリーだけが特別というわけではない。 現在のカントリー業界は、アメリカ音楽産業界でも人気の中心を担うジャンルであり、さらにそれを世界に広めていこうという方針を採っているので、あからさまな
人種問題は存在しない。 特に1970年代以降、アフリカ系の
チャーリー・プライド(
Charley Pride)やフィリピン系の
ニール・マッコイ(
Neal McCoy)など有色系のアーティストたちも第一線で活躍し、さらにバンドメンバーに目を向ければ、もはや
ヒスパニック系や黒人、アジア系も見受けられる。
保守・愛国 [編集]
現在のカントリーは、音楽的には様々な価値観を取り入れて発展しているが、アーティストやファンの政治的スタンスや歌詞に込められた心情の面では保守的な部分が強い。 元々が開拓民の民謡から派生しているため、自分の家族や故郷の州や町、また田舎の
素朴さ、
暖かさ、
荒々しさなどを愛し、カウボーイやレッドネックといった自分の田舎臭いキャラクターを誇りとし、それを主張する内容の歌詞が多く、その裏には東部や都会に対する対抗意識や反発も表現される。 そしてそれが更に大きくなると、
パトリオティズム(
Patriotism:
愛国心)や
国粋主義と結びつき、アメリカ的価値観やアメリカ的自由を推奨する形として現れる。 その代表曲が1980年代初頭にヒットした
リー・グリーンウッド(
Lee Greenwood)の
"God Bless The USA"である。
2001年の9月11日に発生した
アメリカ同時多発テロ事件以降、その保守傾向はますます強くなり、元軍人である父親を尊敬し、自身も軍事基地などで慰問コンサートを開く
トビー・キース(
Toby Keith)の
"Courtesy of the Red, White and Blue (The Angry American)" や
"American Soldier" 、
イラク戦争開戦前後に、反戦派に対して「もう忘れたのかい? あの日の怒りと悲しみを・・・・・。」とアメリカ同時多発テロ事件を持ち出して戦争支持を主張する
ダリル・ウォーリー(
Darryl Worley)の
"Have You Forgotten? " などが
リリースされ、それぞれ大ヒットとなる。
また同時期に、女性カントリー・トリオ、
ディクシー・チックスのボーカル、
ナタリー・メインズ(
Natalie Maines)がコンサート中に、イラク戦争に絡み
ジョージ・W・ブッシュ大統領について「合衆国大統領が(私たちと同じ)テキサス出身である事を恥じる。」と発言したのが波紋を呼び、
中西部から
南部を中心に 全米の多くのラジオ局で彼女たちの曲が外され、カントリー・ファンや大統領支持派によるCDの不買・廃棄キャンペーンなどが行われ、ファンや業界の保守・愛国思想が露骨に現れた。 また、本人や関係者に対する嫌がらせや脅迫も相次ぎ、事実上 業界から干される格好となり、更に
育児なども重なり、活動を一時的に停止する。 しかしながら2006年には、この騒動を綴った
ドキュメンタリー映画『
Shut Up & Sing (
公式webサイト)(黙って歌ってろ!)』が公開され話題となり、また
"Not Ready To Make Nice "「まだ(皆の望むような)よい子にはなれない。」というタイトルのシングル曲(MVの映像は、ナタリーが“
異端審問”や“
思想矯正手術”にかけられるイメージになっている。)を含めたアルバムも発表され、カントリー以外の音楽業界や
リベラル派のファンの支持を受け、2007年の
グラミー賞においては、最優秀アルバム賞を含む5冠を獲得して復活を遂げた。
ダンス [編集]
アメリカには、田舎、都会に限らず各地にカントリー・
バーや
ホンキートンク(
Honky-tonk)と呼ばれる
ナイトクラブが約5000軒以上存在し、それらのほとんどがダンス・フロアを設けており、
カントリー・ダンスが盛んに踊られている。 その世界最大のものが、テキサス州
フォートワースにある
Billy Bob's Texasである。ところが、カントリーがまだ民謡だった時代の
フォークダンスはさておき、現行のカントリー・ダンスの歴史は意外に浅い。 一説には、大都会
ヒューストンのバーで
ロデオマシーンに興じる若者の青春を描いた
ジョン・トラヴォルタ主演の映画、『
アーバン・カウボーイ』(
Urban Cowboy 1980年)が起源とも言われる。カントリー・ダンスは大まかに分けて、ラインダンスとツーステップの2種類がある。
聖地 [編集]
カントリー・ミュージックの聖地は、かつてのアメリカ音楽産業の中心地で、カントリーに関しては今もその力を失っていない街、
テネシー州ナッシュビルにある
ライマン公会堂。 そこで毎週末に開かれていた
グランド・オール・オープリーというライブイベントや、そのラジオ放送(後にテレビも加わる)が名物であったが、現在このイベントは場所を移し、郊外に新しく造られた
グランド・オール・オープリー・ハウスというコンサートホールで行われている。
歴史 [編集]
源流と成立 [編集]
北米大陸へ移住してきた
アイルランド・
スコットランド・
イングランドなどの
ケルト系や
アングロ・サクソン系を中心とした西欧・北欧・東欧系の移民が持ち込んだ音楽、特に
ケルト音楽や
ヨーデル、
ポルカなどが
アパラチア山脈一帯やアメリカ北東部から
アメリカ南部にかけての山岳丘陵地帯の農村などで様々な音楽の影響を受け、オールドタイム・ミュージックやヒルビリー・ミュージックと呼ばれるアメリカ民謡の基礎を形成する。 それが19世紀後半の鉄道網の発達、
蓄音機の発明、20世紀前半の
ラジオの普及になどにともなって北米大陸全土に広まり、その伝統民謡的な部分を保ち続け1940年代に
ビル・モンロー(
Bill Monroe)等により確立された民謡スタイルの音楽を
ブルーグラスと呼び、逆に様々な音楽を取り入れ大衆音楽化して、変化し続けているタイプの音楽をカントリー・ミュージックと呼ぶ。
1930年代に活躍した
ジミー・ロジャース(
Jimmie Rodgers)や
カーター・ファミリーなどが創始者といわれる。
1950~60年代 [編集]
1950年代中盤に入ると、
R&B、
ジャズ、
ブルース、
ゴスペルといった、現在の
軽音楽の母体となる
黒人音楽との融合が始まり、“ロックンロールの王様”
エルヴィス・プレスリーに代表される、
ロカビリー(
ロックと
ヒルビリーの融合)スタイルのミュージシャンを多く生み出し、さらに
スウィングや
ブギといったジャズのリズムを取り入れることにも成功、カントリー自体が様々な方向へと多様化・細分化し始める。 また、このころを境に、民謡やヒルビリー(丘陵地帯の田舎者)音楽という概念は薄れ始め、女性歌手を中心にソフトな
ラブソングや
バラードなどで女性的、又は都会的なイメージを強調する路線や、男性は馬ではなく
ピックアップトラックや
トラクターを運転する現代的なカウボーイや
レッドネック(南部の粗野な田舎者)のイメージ、さらにロカビリーの影響で不良青年や
ヤクザ者を強調する路線も追加される。 そして60年代には
フォーク・リヴァイヴァル・ムーブメントの影響もあり、カントリーの人気が更に盛り上がる。
1970~80年代 [編集]
1950~60年代の急激な変化で巻き起こったブームの終焉により、1970年代に入るとカントリーは田舎の保守的な音楽と見られる傾向にあった。 しかし“聖地”
ナッシュビルとは別に、
カリフォルニア州ベーカーズフィールドや
テキサス州などから新しいサウンドが生まれ新たな流れを作り始めた。また
イーグルス(Eagles)や
CCR、
ジョン・デンバー(John Denver)、
マーシャル・タッカー・バンド、
ケニー・ロジャース、
クリスタル・ゲイル、
スターランド・ヴォーカル・バンド、
ハリー・チェイピン、
ビリー・スワン、
クリス・クリストファーソン、
ベラミー・ブラザーズなど、カントリーの流れを受け継ぐロック系やフォーク系のアーティストたちが活躍したことにより、人気を保ち続けることができた。
1980年代に入ると共和党政権の復活もあり、カントリー人気が再燃し始め、1990年代から現在に至るまでアメリカ白人の間で人気のある音楽ジャンルに位置づけられている。その後、ネオ・トラディショナル・カントリーと呼ばれるカントリーのジャンルも誕生した。ジョージ・ストレイト、リーバ・マッキンタイア、ランディ・トラヴィス、ドワイト・ヨーカムらが、このジャンルの代表的なシンガーである。
現在のカントリー・ミュージック [編集]
人気 [編集]
ロックなどの影響を強く受け、今や若者を含めた幅広い世代の絶大な支持を得て、アメリカでは最も人気のある音楽ジャンルの一つとなっている。 例としては、
花火や
ワイヤーアクションを使い、まるで
ハードロックのような派手なコンサート演出を取り入れた
ガース・ブルックスが、既に全アルバム売上総数1億2,800万枚に達している(ちなみに、アメリカ音楽史上、ガース以外で米国内売り上げ1億枚以上を達成しているのは、
エルビス・プレスリーと
ビートルズ、
レッド・ツェッペリンのみである)。 また、カナダ出身の女性シンガーで、ポップスタイルを定着させた
シャナイア・トゥエインも、アメリカ世帯の3軒に1軒が彼女のアルバムを所有しているというほどの売り上げを誇っており、彼らはもはや世界的ポップスターの
マイケル・ジャクソンや
マドンナなどの歴代総売り上げを超えている。 グループでは、女性トリオの
ディクシー・チックスが既に3,000万枚以上のCDを売り上げ、女性グループとしては史上最多セールスとなっている。
音楽スタイル [編集]
最近のカントリーは、いわゆるロックやポップスの影響を大きく強く受けているが、中には
ヒップホップ調、
ファンク調や
ドゥーワップ調などのスタイルの曲があったり、
NASCARレースのファンや
ハーレーダビッドソンにまたがるバイカー達に人気の
ブルース・ロックや
サザン・ロック風の曲も多い。 また、多くの他ジャンルのミュージシャン(例:
ボン・ジョヴィや
キッド・ロック、
ネリー、
ジェシカ・シンプソンなど)とのジャンルの垣根を越えた
フィーチャリングも盛んに行われており、曲中に
ラップを多用する
カントリー・ラップ(
Country-rap)に、ヒップホップとロックと
テハーノ音楽の要素を融合させ、
Hick-Hop(hickとは「田舎」を意味する。)と称する 独自のジャンルを確立したテキサス出身の黒人ラッパーである
カウボーイ・トロイ(
Cowboy Troy)も、れっきとしたカントリー・アーティストに位置付けられている。
現在は、この様なカントリーのポップ化が進んでおり、「カントリーの産業化」と揶揄されることもあるが、“正統派”と言われるものや、昔から安酒場で歌われ続けている様な往年の
ホンキートンクスタイル、テキサス州などを中心とした地域色の強いスタイル、ブルーグラスやフォークソングなどもいまだ健在で、また十分な人気を保っており、そちらの方向へ回帰する者もいれば、その中間をうまく渡り歩くミュージシャンも多い。
日本の現状 [編集]
日本国内では、カントリーという音楽ジャンルとしての規模が非常に小さいが、カントリーに影響を受けた他ジャンルのミュージシャンは多く、またプロのカントリーミュージシャンも少なからず存在する。 毎年 秋に熊本県
阿蘇の巨大野外ステージで開かれる『
カントリーゴールド(COUNTRY GOLD)』というイベントをプロデュースし、自身も出演する
チャーリー永谷はその草分け的な存在。 しかしながら、そんな日本人カントリーミュージシャンたちの多くは、戦後間もない時期に
進駐軍や
FEN(米軍極東放送)などを通してカントリーに触れ、
ロカビリーブーム到来と共にバンドを組み、
朝鮮戦争や
ベトナム戦争当時、アジア各地の
米軍キャンプやその周辺の
クラブで演奏していた世代、もしくは多少若くても40代から
団塊の世代にかけてがほとんどのため、アメリカの最新流行とは多少のズレが生じている。(カントリーへの造詣が深いことで有名なフォークシンガー
なぎら健壱はその普及にも熱心だが、彼にも同様のことが言える)
ただ、カントリー自体の認知度が低かったり、一、二世代前のイメージが残る日本でも、映画「
パール・ハーバー」や
フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ「
薔薇の十字架」の主題歌を歌った
フェイス・ヒル、映画「
コヨーテ・アグリー」の挿入歌や
アテレコを担当し、自身も本人役で
カメオ出演した
リアン・ライムス、ポップ・カントリーで旋風を巻き起こした
シャナイア・トゥエインなどのアルバムはそれぞれヒットとなった。最近も、
ディズニーのアニメーション映画「
カーズ」に
サントラに参加した
ラスカル フラッツ(
Rascal Flatts)や、
FOXテレビの人気
アイドルオーディション 番組『
アメリカン・アイドル』で優勝し デビューを果たした
キャリー・アンダーウッドや、
ケリー・ピックラー(
Kellie Pickler)、10代を中心に若者からの人気が高く、立て続けにヒット曲を生み出している
テイラー・スウィフトなどもかなりの人気を得ている。 しかしこれらは日本ではマーケティング戦略上、ポップ音楽や映画の
サントラに位置付けられている場合が多く、決してカントリー自体の知名度やジャンルの規模が拡大しているとは言えない。
メディア [編集]
テレビ [編集]
現在、アメリカにおいてカントリーミュージックの最もメジャーな情報発信源となっているのは、巨大
メディア複合企業、
バイアコム(
Viacom)傘下の
カントリー・ミュージック・テレビジョン(CMT)というケーブルTVチャンネル。まさに“カントリー版
MTV”といった感じの構成で人気を博している。 CMTのウェブサイトでは、各ミュージシャンの
ミュージック・ビデオ等、
ストリーミング配信を無料で視聴することも可能。
また、このCMT以外にも
GACや
VH1 Countryなど、カントリー専門の
ケーブルテレビ局は複数ある。
ラジオ [編集]
自動車社会、アメリカでは
カーラジオの聴取率が高く、カントリー専門のラジオ局も各地に多数(地上波だけで2000局以上)あり、
オンラインでも聴取可能な局や、オンライン専門局も多数存在する。
雑誌 [編集]
アーティスト [編集]
往年の代表的なアーティスト (1930年代~70年代) [編集]
現在の代表的なアーティスト (1980年代前半~現在) [編集]
男性アーティスト&男性ボーカルグループ
女性アーティスト&女性ボーカルグループ
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]